ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.46

嘘八百

志尾 睦子

2018年
監督:武正晴
出演:中井貴一/佐々木蔵之介/他


笑門来福も一計

 一年の計は元旦にあり。これから始まる一年をどう過ごしていくかは、年初めに計画すると吉、ということですが、翻れば何かを始める時にはまず計画を立てる必要があるという教えでもあります。抱負や目標を掲げたら、それを実現するための計画をきっちりと練ることが、実現への近道のような気がします。

 昨年大きな生活の変化を余儀なくされた私たちにとって、今年の始まりは、心機一転前向きに臨むためにも、とても大きく大事な意味を持つような気がします。いつ、何を、どうするのか。じっくりと計画し、準備し、大きな花を咲かせたいものですね。そんな思いを込めて、今回は新春の笑門来福となる一本をご紹介します。

 主人公は大阪で古物商を営む小池則夫です。目利きでありながらも、大物を狙いすぎてつい空振りしてしまう、うだつの上がらない男です。実は過去にとある因縁を持ち、それからどうも人生が下り気味なのです。それでも飄々と日々を生き抜く則夫は今日も堺市内を車でうろつき、一軒のお屋敷を見つけます。古い蔵があるこのお屋敷にはきっとお宝が眠っているに違いない。そう睨んだ則夫は、玄関で声をかけます。出てきた男・佐輔に取り入り蔵の中に入れてもらうものの、あるのは「よく出来た贋作」ばかり。人の良い則夫は、まがい物をつかまされている事実を佐輔に伝えた上で、気に留めた茶碗を買い、その家を後にしました。後日、佐輔にまた呼ばれた則夫は、謎の書き物を見せられるのですが、それは何と千利休が書いた書状でした。一獲千金のチャンスが来たと調子に乗った則夫は、佐輔を騙して幻の茶器を安く手に入れます。しかし、ほくそ笑んだのも束の間、自分が佐輔に騙されていたことに気づきます。

 実は佐輔が贋作家で、佐輔は則夫の因縁の相手に操られていたのです。佐輔にすっかり騙された則夫でしたが、これを逆手に取り、一緒に因縁の相手をギャフンと言わせようと持ちかけます。はじめこそ乗り気でなかった佐輔ですが、則夫と二人で周到な計画を立て、敵に立ち向かうことを決意します。

 騙し合いも計画あってこそ。うらぶれた男たちの再起をかけた計画は緻密で、相手の裏をかいていきます。そして肝心なのは、それを実行するための準備です。常日頃の鍛錬も大事だと頷くばかりです。

 悪事はもちろんよろしくはありませんが、いかに計画性が大事か、そして無計画だと何が起こるのか、をこの映画は緩やかに笑いをもって伝えてくれるのでした。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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