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転々

志尾 睦子

2007年 1時間41分 
監督:三木聡 
出演:オダギリジョー/三浦友和

まちを歩けば、幸せが見えて来る

 長く暑い夏が続きましたが、10月に入ると途端に秋がやってきました。この季節になると決まってしたくなるのが、散歩です。春は花粉であまり出歩きたくなくなり、夏は暑くてどうにも出不精になります。涼しくなってきて、スポーツに精を出すほどの熱量がない私には、鈍った体を動かす1番の運動にもなります。ごちゃごちゃした頭を整理するにも、歩くのはとてもいいものです。秋から冬の終わりにかけて、日々気の向くままに散歩をするのがこの数年恒例になっていますが、散歩といえば思い出すのが、今回ご紹介する映画です。

 主人公は、のんべんだらりと日々を過ごしていたらいつの間にか84万円の借金を抱えてしまった大学8年生になる(といっても年齢不詳の)青年・竹村文哉。彼の部屋に突然、借金取りが現れるところからこの物語は始まります。嘘かほんとか、竹村は頼れる人もおらず、借りた借金の返済目処も立たず、でもそんなに切羽詰まるでもなく、ぼんやりまた日を重ねる始末。すると、借金取りがある提案を竹村に持ち掛けます。東京散歩に付き合えば100万円やる、と言うのです。その男が行きたい時に行きたい場所へ散歩に行く。最終目的地は霞ヶ関。期限はないので三日かもしれないし、1ヶ月かもしれない。胡散臭いと思いながらも、借金を返す手立てのない竹村は、その誘いに乗ることにしました。

 約束の時間になっても現れない借金取りを、心配そうに待っている竹村の前に、運動靴に履き替えた借金取り・福原が現れます。そうして二人の奇妙な散歩が始まりました。

 福原がなぜ霞ヶ関を目指そうとしているのか。なぜその散歩に付き合わなければいけないのか。竹村の頭の中には疑問符ばかりですが、少しずつその素性がわかってきます。知り合ったばかりの借金取りと返済する若者が、東京中を散歩しながら、会話を積み上げていく。考えてみると本当に妙なシュチュエーションなのですが、歩みも止めず、会話も途切れない彼らの様子は、見ていて飽きることもありません。qa3て、散歩に出掛けてみてはいかがでしょうか。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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