60.高崎新風土記「私の心の風景」

巡礼みち

吉永哲郎

 春の訪れを告げるさまざまな花や行事が紹介されますが、なかでも四国八十八か所の霊場を巡礼する「お遍路さん」の姿に、春到来をひときわ感じられます。
 巡礼とは、宗教上の聖地を訪れることをいい、キリスト教ではエルサレム、ローマ、サンティアゴが三大聖地として知られています。日本では観音札所巡りや善光寺、大山詣などが、巡礼の姿として考えられます。県内には阪東三十三番札所十五番白岩の長谷寺(ちょうこくじ)、十六番の水沢寺(すいたくじ)があり、古くからこの二寺を巡礼する人が多く、その巡礼みちが今も往時のまま残っています。箕郷町松の沢の石仏群「百観音」に通じる道です。
 芝桜公園の入口を過ぎ、通称観音坂を下り追分橋まで行く途中の右側に、山に入る細い道があります。それが白岩と水沢を結ぶ古い巡礼みちです。坂を上りつめますと、小高い丘になり、その平坦地に百三十三体の素朴なお顔立ちの石仏(百観音)があります。造られた年代や作者ははっきりしませんが、安永・寛政・享和などの江戸後期の年号と信州高遠の石工の名が読み取れます。
 この石仏群が巡礼道沿いに位置しているところから、「写し巡礼」(観音霊場の写しを設け、ここを踏み歩くことによって、現地を訪れたことと同等のご利益を得る)の聖地としての意味をもっていたのではないでしょうか。ある春の夕暮れ、半身不自由の杖をついた老婆が、この観音像ひとつひとつに手を合わせていました。まさに、「写し巡礼」の今にある姿を見た思いがしました。

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