34.高崎新風土記「私の心の風景」

ドンドン焼き

吉永哲郎

 七草が過ぎますと、近所のガキ大将が中心となって、「おじさんおばさん松おくれ、くんなけりやドンドン焼き焼かせない」とはやしながら、家々の正月飾りを貰い歩いたものです。こどもだけの社会がにわかに出現して、その仲間の一人として松飾りを集めることが、義務付けられたように感じ、人より多く集めることによって、そのこども集団での地位が決められるようにも感じました。育成会などなかった時、民主的とはほど遠いその社会で、人と人のつながりなどをガキ大将から教えられたものです。
 近年正月十五日の早朝のドンドン焼きの松小屋が、地域の人たちの協力によって、ところによっては年末から田畑や川原の空き地にたてられています。どこの松小屋も手がこんでいますが、なんといっても高崎ならではの松小屋は、福ダルマが沢山飾られていることです。そのダルマの飾り方は地区によって様々に工夫されていますので、高崎の小正月の風景として見てまわる楽しみがあります。特に、烏川の上流から松小屋を見歩くのも一興です。
 門松は古くは十メートルほどの柱を数本立て、その先端に藁を入れたじょうご状のものをつけ、神前の火でつけた藁松明を投げ上げて燃やす「柱松」というものでした。門松は神が天からおでましになり、よりつく神木の意味をもっていました。よき神がよりつくように門松をより高く立てたのです。ドンドン焼きの松小屋を高く立てるのはこうした信仰の背景があるのです。
 寒風にさそわれ立ち上る真っ赤なドンドン焼きの炎に、野性の心が目覚めます。

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