石碑之路散歩風景18

吉永哲郎

前回の「伊香保風」の歌碑から舗装道路を金井沢碑方面へ下りますと、旧道の分岐点に大きな歌碑があります。今回は直接、上信線根小屋駅から金井沢碑へ歩いても行けますが、山道を散策しながらの万葉歌碑をみてきましたので、山から下っての見学コースになりました。歌碑は高崎自然歩道「金井沢碑」の入り口にあります。

石川郎女が大津皇子の歌「あしひきの山の雫に妹待つとわれ立ち濡れぬ山の雫に(山の木々のしずくにあなたを待って、すっかり濡れてしまった。山の雫に)」の歌にこたえた歌で、大沢雅休の書。碑面は「吾乎待東君賀沾計武足日木能山之四附二成益物乎」と万葉仮名で書かれ、訓読すると「吾を待つと君が濡れけむあしひきの山の雫に成らましものを(私を待ってあなたがお濡れになったとおっしゃる山の雫になれたらよかったのに)」とよみます。

大津皇子は天武帝の第三皇子、姉は斎宮大伯皇女。天武帝崩御後、皇子の謀反が発覚し、死を賜り、二上山に葬られる。この間のことは万葉集にあり、特に姉の大伯皇女の弟思いの哀歌はよく知られています。
石川郎女に関しては不詳ですが、多くの皇子たちに愛され、大津皇子の謀反にかかわる女性ともいわれ、謎めいた美女です。

秋になり露深き頃、野道を通ってこの歌碑の前に立ちますと、大津皇子と石川郎女との逢引の姿が思われます。夏の初めの朝、ここを訪れた時、ホトトギスが鳴いていました。この鳥といい、秋の朝露といい、万葉人の恋の世界を思わせる歌碑のあたりです。

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