ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.28

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

志尾 睦子

1997年 アメリカ
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ロビン・ウィリアムズ/マット・デイモン/ベン・アフレック
   
   
心を動かすと人生が動く

 先日今までやったことのない少し大きなプロジェクトに参加しました。一緒にその仕事を築き上げていく仲間は初めましての人たちばかり。趣味も嗜好も、経験値も、人となりも全くわからないまま、ある一つのことに向かってそれぞれが与えられた役割をこなさなければいけない。そのためには、自分の仕事の質を上げる以上に、それぞれの仲間の癖や思考や行動を知り、活かすことが要求されます。
 生きていくことはそうしたことの連続なのでしょうが、仕事が絡むとその精度を短期間であげる必要があります。それは思った以上に骨の折れる作業ですが、そのポイントはやはり、心を開くこと以外にないな、と痛感しました。そんな時にふと思い出したのがこの作品です。
 物語の軸を握るのは一人の青年・ウィルです。彼は大学で清掃の仕事をしています。荒れた地区で生まれ育ったウィルは素行も悪く、仲間とつるんで悪さを繰り返してきました。ただ、彼は読書が好きで知識も豊富、考えることも好きな青年でした。ウィルの職場である大学では、数学科の授業で高名な教授が学生たちに難題を出すのが恒例になっていました。ある日、ウィルは廊下の黒板に書かれたその難題をいとも簡単に解いてしまいます。優秀な学生たちが集う大学で誰一人解けなかった問いを、清掃員の青年が解いてしまった。ウィルの非凡な才能を活かしたい教授は、問題行動の多いウィルをどうにか更生させようとかつての旧友であり心理学者のショーンにウィルを委ねることにします。
 ショーンもまた優秀な学者でしたが最愛の妻を亡くしてから心を閉ざしたままでした。ウィルとショーンの関わりは、次第に互いの内側にある悲しみや怒りや絶望を溶解していきます。
 一人の不遇な天才が、自らの才能に気づき未来を切り開いていく、という単なるサクセスストーリーではありません。身を置く環境で人は育てられ、そして人格が形成され、その中でそれぞれの役割も担わされていきます。そうしてコミュニティが生まれ均衡が保たれる社会構造があります。新しい役割が出てくるとまた人々の関係性も環境も変わり均衡が崩れる。そうした時にどう修正するのか。どう互いを認め乗り切っていくか、がこの物語には豊かに描かれています。
 当時無名だったマット・デイモンとベン・アフレックが脚本を練り、出演。彼らは高い評価を受け今に至ります。そんな背景も合わせてこの世界観をのぞいてみるのもオススメです。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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