ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.32

ジャージー・ボーイズ

志尾 睦子

2014年 アメリカ 134分
監督:クリント・イーストウッド
出演:ジョン・ロイド・ヤング/エリック・バーゲン/
   マイケル・ロメンダ/ヴィンセント・ピアッツァ

ハーモニーが生み出す優しさに身を任せてみる

 今年は温かな日が続く秋の入り口でしたが、ようやく寒さが本格化してきました。遅れてきた紅葉も目に鮮やかで日毎に季節の深まりを感じます。年末が見えてきて忙しい時期でもありますが、仕事と休息のバランスは上手に取りたいものですね。冷たい風が身を強張らせる時だからこそ、体には温かな飲み物と、心の栄養をたくさん取り入れたいものです。

 さて今回は、こんな季節にぴったりの心に響く音楽と人生の深さを感じられる一作をお届けします。

 1960年代に一世を風靡したアメリカのポップスグループ「ザ・フォー・シーズンズ」が辿った軌跡を、彼らのヒットナンバーとともに描き出した物語です。

 ニュージャージー州の小さな街で育ったフランキーは、学校を出ると床屋の見習いとして働き始めました。時間があれば友人のトミーとその兄ニッキーとつるみ、遊びが時には悪事に発展してしまうような生活を繰り返す日々。そんな彼らでしたが、そばには音楽がいつもありました。特にフランキーの独特な歌声は周囲を圧倒する力がありました。それは、町の実力者であるマフィアのデカルロさえも味方につけてしまうほどだったのです。そんな彼らの元に、ある日新しい仲間が加入し、バンドが本格的に始動することになりました。「ザ・フォー・シーズンズ」となった彼らはレコード会社と契約。はじめこそ鳴かず飛ばずでしたが、「シェリー」の軽快なメロディと美しい歌声はたちまち聴衆を惹きつけ、ここから彼らは一気にスターダムを駆け上ります。

 富と名声を得た彼らを待ち受けていたのは数々の試練でした。マフィアの影がちらつく製作の裏側、それぞれの価値観のすれ違い、裏切りや挫折は彼らを容赦なくスターの座から引きずり下ろしていきます。

 こうした栄光と挫折の物語はお決まりのようにも思えますが、本作では一人一人の人生模様と心の機微が丁寧に抽出されているため、物語は厚みを増し、胸を打ちます。なんといっても印象深く残るのが、いろんな歯車が合わなくなっても、歌を愛し人を愛し、誰もの人生を愛そうとするフランキーの人間力です。ボロボロになっても、出来ることを一つずつ重ねていこうとするフランキーの誠実さに心を打たれました。

 名曲の裏に物語あり。名曲「君の瞳に恋してる」を聴く耳が、この映画でまた変わりました。美しいハーモニーと音楽で奏でる人生ドラマ。エンドロールまでも見逃せない充実の映画時間をお約束します。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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