ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.36

天使の分け前

志尾 睦子

2012年 イギリス=フランス=ベルキー=イタリア
監督:ケン・ローチ
出演:ポール・ブラニガン他

人生を熟成させるコツ

 慌ただしく日々が過ぎてゆく年度末。一年の総まとめをし、次年度に向けて気持ちも仕事も整えていくというのは、本当に骨の折れる事ですね。気忙しくしてしまい、ほっと一息いれる暇もないという方が圧倒的に多いと思います。気づかぬうちに追い込まれて、身も心もヘトヘト、になりがちな時期ですからお互い気を付けていきたいものです。どうにもならない時こそ、休んでみたり、人の声に耳を傾けたり、視点を変えることで全く違う空気を掴むことができるものです。

 今回ご紹介するのは、仕事に追い込まれる以前に人生に追い込まれていた青年のお話です。舞台はイギリス・グラスゴー。不況が続く中、うまく社会の軌道に乗れなかった若者・ロビーは家族ともうまくいかず定職にもつけないでいます。もちろんどこかでこんな人生から抜け出したい、頑張りたいと思っているのにそのきっかけが掴めず、心が荒みがち。今回もふとしたことで暴行事件を起こして逮捕されてしまいます。今度こそ刑務所だと言われていた彼ですが、近く父親になる事に免じて社会奉仕活動で処罰を受けることになりました。

 いま一つ自覚のないロビーは初日から遅刻し、なかなか仕事に精が出ませんが、実際に赤ん坊が生まれその小さな体を抱いた時、父性の本能が呼び覚まされます。この子のためにも自分と向き合わなければならないと。そんな彼の小さな変化に気づいたのが指導係のリーダー・ハリーです。仕事を丹念に教え込むほか、ウイスキーの愛好家であるハリーは、趣味に没頭する楽しさをロビーに教えます。一緒に蒸留所をまわるようになったロビーは、意外にもテイスティングの才能を持ち合わせていました。それまで趣味もなく特技もないと思っていたロビーは初めて人に褒められ、自分の内なる才能を認められ、変わっていきます。ウイスキーについて猛勉強を始めたロビーは、その特徴を知ることで人生一発逆転の奇策を思いつくのです。

 がんじがらめになった時こそ、目先を変えてみる。自分にも、人にも優しくしてみることでふと景色が変わるものなのかもしれません。

 タイトルにある「天使の分け前」というのはウイスキーが樽の中で熟成する間に蒸発する分のことを指すのだそう。1年に2%が目減りしていくことになり、天使にあげた分どんどん美味しくなる、という小洒落た意味があるそうです。

 さて「天使の分け前」はロビーたちに何をもたらしてくれるのでしょうか。それは見てのお楽しみです。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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