ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.64

グエムル 漢江の怪物

志尾 睦子

2006年 韓国 120分
監督:ポン・ジュノ  
出演:ソン・ガンホ/ピョン・ヒボン/パク・ヘイル/ペ・ドゥナ


肝を冷やす 本当にコワイモノは何か

 今年は驚くほど早くに梅雨が明けました。そして始まった連日の猛暑は、体への影響は元より電気や水の制限にも繋がり、社会生活にも大きな影響が出ています。自然環境の大きな変化に危機感しかありません。それを嘆くだけにはならないように、受け入れて対処していく術を身につけたいと思うこの頃です。

 さて、夏には肝を冷やして涼を取るという娯楽方法もありますね。私はホラーが大の苦手ですが、社会問題を孕んだヒヤリとした映画で一計を案じるのも夏時間の過ごし方としてオススメだなと思っています。今回は、韓国の名匠ポン・ジュノ監督が手がけたモンスターパニック映画をご紹介します。

 舞台は首都ソウル特別市の中央部を流れる大きな川・漢江(ハンガン)流域。カンドゥは、このエリアで長く露店を営むパク家の長男で、年老いた父親とこの店で働いています。居眠りばかりののんびりや、甲斐性もありません。そんなカンドゥには、頼りない父を叱咤激励するしっかりものの愛娘・ヒョンソがいて、彼らは貧しいけれども互いを気遣いながら暮らしていました。そこに突然事件が起きます。漢江に巨大な怪物・グエムルが現れ、川辺で憩う人々を捕食し始めたのです。不測の事態に河岸は大パニック。カンドゥはヒョンソの手を取って逃げますが、途中でその手が離れてしまい、結果ヒョンソはグエムルに捕われ漢江へ消えてしまいました。

 巨大な怪物の襲撃で街は大混乱。軍隊は河原一帯に非常線を張り、近くの体育館には命を落とした人たちの合同葬儀場が作られました。カンドゥの弟ナミル、妹のナムジェも駆けつけ、かわいい姪っ子の不慮の死に気持ちを整理することもできません。そこへ防護服を着た政府の役人たちが現れます。グエムルが未知のウイルスを持っているという情報から、機械的に除染を始めグエムルと接触したカンドゥは隔離、ナミルたちも病院に連れて行かれてしまいます。

 病院で隔離されたカンドゥはその日の夜、死んだはずのヒョンソから「下水溝にいる」と電話を受けます。電波の悪い中かろうじて繋がった一瞬の会話。娘は生きている。カンドゥは家族と共に、ヒョンソを助けに行こうとするのですが…。

 グエムルはなぜ漢江に現れたのか。怪物と対峙する市井の民は、本当は何と闘っているのか。痛烈な社会風刺がビシビシ刺さり、事の成り行きはひと事ではありません。現代社会の恐ろしさにヒヤリとしながら、パク家の愛と信念にも魅せられました。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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