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LIFE!/ライフ

志尾 睦子

2013年 アメリカ 115分
監督・主演:ベン・スティラー
出演:クリスティン・ウィグ/ショーン・ペン

人生の目的は、冒険の中にある

 新しい年がやってきました。どんなことがあっても、時は止まることなく刻まれます。時間という尺度は絶対値ですが、その時間がどんなふうに過ぎていくのかは物事によって随分と違うものです。人生と考えてみれば何を選びどう行動するかは自分次第。当たり前のことですが、過ぎていく日々においてそれを実感することは意外とないなと思います。一年の始まりに寄せて、そんなことを改めて心に刻める素敵な一作をご紹介したいと思います。

 主人公のウォルター・ミラーは、大手出版社の看板雑誌である『L I F E』の編集部で、ネガフィルムを担当する真面目な男。彼の勤める部署は写真雑誌の根幹を支えるところですが、その仕事ぶりが人目に触れることはありません。それゆえなのか、ウォルター自身も控え目で地味な毎日を送っています。想いを寄せる同僚のシェリルに声をかけられないウォルターは、彼女がパートナー探しのウェブサイトに登録していることを知り、そこに入会、まではするもののアクションを起こすこともできません。現実では臆病者のウォルターですが、彼には空想の世界に入り込む癖があり、そこではどんなことだって素敵に解決ができ、アクションヒーローにもなれて、情熱的な恋を手に入れることだってできました。彼は空想の世界に浸ることで、日々を乗り越えている様なところがありました。

 ある日、ライフ誌の廃刊が決まり社内は大混乱に。大規模なリストラも同時に行われる中、ずっと一緒に仕事をしてきたフォトグラファーのショーンから、最後のネガが送られてきました。しかし、表紙に使って欲しいと指定されたネガだけがどこを探して見つからないのです。自身のクビもかかった一枚のネガを探すため、ウォルターはショーンの後を追うことにします。携帯電話を持たないショーンを探すのは至難の業でしたが、一度もネガを紛失したことがないという管理者としての誇りが、ウォルターを突き動かします。

 現実を乗り越えるために空想に逃げ込んでいた男が、奇しくも現実の冒険に出かけるというわけです。消極的ゆえに生まれたウォルターの空想は、次第に自分の背中を押す魔法の力になっていきます。自分を信じること。それさえできれば、数々の困難も乗り越えられるのだと、この物語は伝えてくれます。時代に翻弄されても、時に荒波が来たとしても、新しい未来は開けるしどんな自分にもなれる。そんな希望をくれる爽やかな一作です。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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