107.高崎新風土記「私の心の風景」

もうすぐ花の街に

吉永哲郎

 古くから日本人は、四季のうち最も春の到来に深い関心をもっています。古今和歌集第一巻に「花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯(ウグイス)さそふしるべには遣る(梅の香を風の頼りに添えてやって、鶯を誘い出す道案内として送ろう)」などと、春到来の歌が多くあることからも理解されます。
 日本の2月は寒い日が続きますが、南仏カンヌ郊外、中世の古い石造りの家がひしめくトゥレット・シュル・ルー村では、2月末に「スミレ祭」が開かれます。スミレの花が春到来を告げています。
 さて、今冬は春の到来がいつになく待たれます。思わず「梅は咲いたか 桜はまだかいな」と口にしながら、春の兆しを探しに、高崎公園やお堀端を散策しました。冬枯れのケヤキやムクの木立を見上げますと、こずえに点々とついている黒点が、お正月に見たときよりもふくらみ、まだ桜のつぼみは固いのですが、よく見るとほんのりと紅をさしていました。わずかな自然の移ろいに春の兆しを感じました。
 春の兆しをはっきりと感じさせるのは街の花屋さん。店頭に花の色と種類が多くなっていくからです。散策中にスミレは見つかりませんでしたが、どこからか「すみれ色した窓で」と、江間章子作詞・團伊玖磨作曲『花の街』の合唱が聞こえてきました。
 ひだまりの梅が咲き始めたのは、春の女神のお目覚め、花の街への準備にとりかかる時がきたと、感じました。

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