70.高崎新風土記「私の心の風景」

馬庭の鏡開き

吉永哲郎

 正月三が日の正式の食べ物は、地方や各家の慣習によって様々ですが、一般的には餅と野菜類を入れた吸い物です。新年を祝う儀礼食を雑煮というのは、元来年神に供えた神饌を人間が戴いたものをいい、一昔前この神聖視された儀礼食は男性によって調理されていました。また、この餅を中心にした正月儀
 礼食に対して、里芋や蕎麦などを食べる餅なし正月の家もあり、さらに餅の形も切り餅の四角形・正円形、長卵形や楕円形などさまざまであることから考えますと、日本文化は単純に稲作文化だけでなく、畑作文化を含んだ複雑な要素をもつ国であることが思われます。さて、鏡餅は飾るところが特別です。
 床の間や神棚、古く武家では具足・鎧に供えました。鏡開きは武家の具足開き、鎧開きのことをいい、供えた鏡餅を雑煮にして食べる祝いの行事です。多くは二十日に行われました。今は仕事始めを兼ねた行事となり、早く日常生活にもどることから早めに行うところもあるようです。
 一般の鏡開きは、お供えした餅をおろし、汁粉にして食する行事となっていますが、古風な武家の鏡開きの行事が高崎に残っています。上信線馬庭駅から歩いて五分、馬庭念流道場(県指定史跡傚士館)があります。
 鏡開きの日(一月の第三日曜日)この道場で、数百年の伝統を伝える古武道念流の演武が行われます。自家製防具で身をかためた門人たちの長く尾を引く「ヤッ、トウー」のかけ声が、普段静かなたたずまいの空気をゆるがします。私はその響きに、しばし遙かな国をゆく旅人の気分にひたります。
(高崎商工会議所『商工たかさき』2010年1月号)

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