71.高崎新風土記「私の心の風景」

冬の桑畑風景を求めて

吉永哲郎

 養蚕の盛んな時に育った上州人にとって、桑は見慣れたありふれた木で、何の見所などないと思っていましたが、養蚕が衰退した今は、桑畑を探すのに一苦労するようになりました。
 以前、冬になりますと、畑のまわりの畦に列をなした桑木、きれいに刈り込んだ桑畑などが随所に見られ、養蚕県ならではの冬の風景でした。年を重ねたせいでしょうか、その風景を懐かしむ気持ちが年々強くなります。
 「頬白や空解(そらどけ)したる桑の枝」という村上鬼城の句があります。「空解したる桑の枝」とは、葉の落ちた桑の枯枝のことです。まさに、冬の桑畑の風景の趣をとらえた句です。
 さて、なにげない冬の桑木ですが、実は養蚕農家の人たちが春によい芽がでるよう、一本一本の桑木に祈りをこめて、丁寧に仕立てたものです。それは、年末になりますと、正月を迎える気持ちから庭の木々を剪定し整えるのと同じです。
 桑の木の仕立てには、毎年高さ30センチに枝を刈り込む根刈り、高さ60センチくらいに刈り込む中刈り、高さ1メートル以上に刈り込む高刈りの3種類があります。
 なかでも枝を残さず切って、げんこつのような切り株、丁寧に剪定した桑木などが、私にとっては印象深い冬の桑畑風景です。この風景を求めて歩きました。そして先のげんこつ型の切り株の畑を、上信線高崎商科大学前駅を降りて県道を北へ少し歩いた道ばたに、丁寧に刈り込んだ桑畑を、鼻高展望花の丘付近で見つけました。その時、感傷的になっていたのでしょうか、目頭が熱くなりました。
(高崎商工会議所『商工たかさき』2010年2月号)

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