53.高崎新風土記「私の心の風景」

合歓(ねむ)の花の街

吉永哲郎

夏を象徴する花といえば好みによりますが、わたしは合歓の花です。合歓は、西はイランからインド、東南アジア、そして日本に分布する夏の花で、日本では原生林や山間にはなく、海沿いの平地、人がくらす里にみかけます。万葉人は「ねぶ」「ねぶり」といい、「ねぶる」(眠る)とかかわる語です。合歓の葉は、日が当たると開き、夜になると左右から目をつむるように閉じることから「ねぶ」という語が生まれ、さらにこの葉の性質から、男と女の愛し合う姿「合歓」と、表記したといわれています。
 万葉の女人紀郎女(きのいらつめ)が、恋人の大伴家持に「昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓の花君のみ見めやわけさへに見よ」と、女の独り寝の嘆きを訴え、恋人の関心をひこうと詠みかけた歌があります。また、芭蕉も『奥の細道』の秋田の象潟で、「象潟や雨に西施(せいし)が合歓の花」の句を記しています。西施は中国古代の呉王夫差の愛妃で、憂愁美人といわれ、その美しさを合歓の花に重ねて表現した句です。
 高崎は身近に合歓の花を愛でることができる、ロマンあふれる街です。西口駅前から市庁舎に向かって歩いていきますと、あら町の延養寺近くに「ねむの木児童公園」があり、音楽センター付近をはじめ、城址公園にはところどころに大きな合歓木があります。合歓の木陰の涼風に、花の物語を思いつつ、しばし暑さを忘れたいものです。

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