石碑之路散歩風景17

吉永哲郎

 4月から5月の里山(石碑の路)を散策しますと、さまざまな小鳥のさえずりを耳にし、道端には山桜・ミズキ・山つつじ・山吹などの花が咲き、若葉は日に日にみどりが色濃くなります。わずかな登坂は額の汗を拭きながら歩くようになります。

 今回の碑は、前回の碑の近くに、高さ86センチ、横192センチのどっしりとした石碑です。署は千代倉桜舟で、「伊香保風吹く日ふかぬ日ありといへどあがこひのみし時なかりけり」と刻された東歌の一首です。
 歌意は明瞭で「あなたへの思いはとどまることがない」という情熱あふれる歌です。「伊香保風」について伊香保の風、榛名颪(おろし)、上州の空っ風などといわれますが、私は「榛名連山の方から吹いてくる、暮らしの中で感じる日常的な風」と考えています。

 万葉集で「風」を詠んだ歌は約300首、その中で秋の風が一番多く70首近く詠まれています。東国の風の歌は8首(東歌6首・防人歌2首)のみです。古代人は風を、はく息と同じに生命の根源としてとらえ、風邪は風の神が起こすものと考えていたようです。日本書紀に、イザナミノミコトが朝霧を吹き払った息から風の神が誕生し、神名をシナトベと記しています。
 やがて風の神は稲作、航海安全、風邪を治す神とされ、各地に祀られるようになりました。東国に風の歌が少ないのは、都人の風信仰とは別の、風に恋の世界を織り込んだ、人間感情の詩表現をもっていたからと、この東歌から思うのですが。

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