芸術劇場で「音楽のある街」が新たな幕開け

(2019年08月31日)

高崎芸術劇場

高崎駅東口前の高崎芸術劇場の開館まであと1カ月。高崎芸術劇場は、上質な音楽の場となり、「音楽のある街・高崎」でこれから数々の名演が繰り広げられることだろう。

 

ぜいたくに音楽を楽しむ場

高崎芸術劇場は、全国、世界からたくさんのアーティストや観客が集う質の高い劇場として、開館を待っている。高崎芸術劇場は、国内最大級の舞台間口の広さを持ち古今東西の音楽や舞台芸術の公演に対応した大劇場(2,030席)、ロックコンサートや演劇・舞踊・能などの多様なパフォーマンスが可能なスタジオシアター、群馬県初の本格的音楽専用ホール(413席)、リハーサルやレッスンのためのスタジオなど、「『鑑賞と創造』を一体化した複合的な芸術施設」となっている。

大劇場は多目的ホールとされているが、オーケストラの響きを豊かに表現できることをめざしている。また音楽ホールは群馬県初の音楽専用ホールで、本格的な音の響きにこだわるなど、大劇場・音楽ホールともに最高の音響調整が行われており、風格のある空間でクラシック音楽を堪能できる設計となっている。

高崎芸術劇場は「音楽のある街・高崎」の名を国内外に高めていくものとなるだろう。

 

100日間に50公演

高崎芸術劇場では9月20日の開館から連日のようにコンサートが予定されている。9月から10月は開館記念事業と第30回高崎音楽祭の公演が目白押しとなっており、12月までの3カ月余り、100日間で約50公演が行われる予定だ。また来年1月以降の予定も既に約20公演余りが発表されている。

全国各都市で開催されているコンサートについては、主催者や内容・規模が様々で、比較することは難しいが、コンサート興行のプロモーター68社が加盟するコンサートプロモーターズ協会のまとめでは、2018年の1年間に群馬県内で行われた公演は163公演となっており、高崎芸術劇場の一施設で9月から12月までの50公演はかつてない公演頻度といえる。また公演数の少ない県の一年分にも匹敵する。

 

こけら落とし公演が高倍率

9月20日の開館記念演奏会は、「歓喜の歌」で知られるベートーヴェンの交響曲第9番を演奏。大友直人(指揮)、群馬交響楽団(管弦楽)、高崎第九合唱団、ウィーン国立歌劇場などで活躍するクリスティン・ルイスさん(ソプラノ)、東京芸大卒でブダペスト国際声楽コンクール1位入賞の経歴を持つ高崎出身の泉良平さん(バリトン)らが出演する。

入場は、はがきによる公募招待で、応募数は受付開始後すぐに定員を超え、その後も申し込みが殺到して約1万7千人となった。出演者の賛同で、同日に追加公演が行われることになった。

 

世界最高峰のピアニストも招へい

これまで高崎音楽祭は群馬音楽センターをメイン会場にしてきたが、今年は高崎芸術劇場だけで開催される。高崎音楽祭は、毎年、多彩なゲストと個性的な音楽性で来場者を楽しませており、今年は高崎芸術劇場効果もあってチケットの売り上げも伸びているそうだ。

高崎音楽祭のオープニングコンサートは歌手の加藤登紀子さんと森山良子さんが初共演。クラシック音楽界で現在最も高い評価を受けるアルゼンチン出身のピアニスト、マルタ・アルゲリッチさんが初出演し、愛弟子の酒井茜さんとピアノ・デュオ・リサイタルを行う。

 

高くても満足できる演奏会

オーケストラ、海外アーティスト、国内の人気アーティストのコンサートの入場料金は、都内を会場としている場合だけではなく、地方都市でも1万円以上に設定されることも多くなってきている。

これまで群馬音楽センターで開催されていたコンサートは、開催数も余り多くなかったのだが、入場料は1万円以下が多く、高くても7千円、8千円という設定だった。もちろん入場料はリーズナブルに設定されるほうが手軽に音楽を鑑賞できるが、入場料に見合う、あるいは価格以上の価値や満足感が得られることは、ファンにとってコンサートの大きな魅力である。演奏者、演奏内容はもちろん重要だが、会場も入場料設定の重要な要素となることは言うまでもない。

高崎芸術劇場では、歌劇椿姫や辻井伸行などS席の入場料が1万円を超えるコンサートも目を引き、高崎でも高額な入場料のコンサートが開催され、その客層を掘り起こしていることは大きな動きと言えるのではないだろうか。

 

1万円が安いと言われる演奏会も

群馬音楽センターは音質やアメニティなど施設面の課題があるので、高額な入場料を設定することは限られたケースであったかもしれない。

この5年間で、群馬音楽センターでS席1万円以上の価格設定があった主なコンサートは、年間に1本程度で「フジコ・ヘミングピアノソロコンサート2014(2014年6月)」、「蝶々夫人(2017年2月)」「佐渡裕指揮ケルン放送交響楽団(2017年10月)」、「ミハイル・プレトニョフ指揮ロシアナショナル管弦楽団(2018年6月)」となっている。

今回の高崎音楽祭では、高崎芸術劇場大劇場で行う「酒井茜 &マルタ・アルゲリッチ ピアノ・デュオ・リサイタル」のS席が1万2千円に設定され、おそらく高崎音楽祭としても初の1万円超えになったのではないだろうか。なお、高崎の後に東京のサントリーホールで行う「酒井茜 &マルタ・アルゲリッチピアノ・デュオ・リサイタル」はS席1万6千円である。

2014年に群馬音楽センターで「フジコ・ヘミングピアノソロコンサート」が行われた際には、「フジコ・ヘミングを1万円で聴くことができるなら安い」と言われ、チケットはすぐに完売となった。最近では辻井伸行さんのコンサートが、あっという間に完売になってしまっている。

 

聖地音楽センターで群響を聴く

高崎市民にとって、クラシック音楽とは、群馬音楽センターで群馬交響楽団の演奏を聴くことであると言ってよい。世界的建築家アントニン・レーモンドが設計し、「時の高崎市民之を建つ」と建碑された聖地・群馬音楽センターで群響を聴くことに意義があるのだ。

時が過ぎ、当代一を誇った群馬音楽センターの音響設計が時代遅れとなっていることも示され、響きが良いと定評を持つ都内のホールで群響の演奏を聴いた音楽ファンからは、「まったく別のオーケストラと思うほど、音の違いを実感した」と言われた。また音楽センターはステージの奥行き等も狭いので、バレエなどはスケール感に物足りなさを指摘する声もあった。

真偽は定かでないが、音楽センターは音が悪いので、「音楽センターでは演奏したくない」と言っているオーケストラもあると言われている。

またコンサートの主催者からは「舞台や楽屋が使いにくい」、観客からは「座席が狭い」と言われ、ロビーの構造上、屋外で入場待ちをしなければならないことも不便だった。

高崎市も群馬音楽センターの維持に努め、施設改善を実施してきたが、建築家アントニン・レーモンドによる歴史的設計に大きく手を加えることはできなかった。また群馬音楽センターの価値は、あくまでレーモンドが設計したオリジナルを使い続けることにある。

 

 

「音楽のある街」で コンサートが行われない

昨今のポピュラーやロックのコンサートは、演出が凝っていて、仕掛けも大掛かりになる傾向があり、群馬音楽センターはステージ面積とステージ天井高の不足によって、ポピュラーコンサートの開催が敬遠されるようになっている。群馬音楽センターのステージ天井の構造、搬入口が狭くて機材が入らないなど、ポピュラーコンサートの開催にとって致命的な問題で、群馬音楽センターのステージは、昨今のコンサートに対応できないという。

他のホールでは照明や舞台装置など演奏と一体となった大掛かりな演出を楽しんでもらえるが、群馬音楽センターでは、演出の規模が縮小、限定されるのでアーティストの意図を十分に実現することできない。「来場者をがっかりさせるので、他の会場で開催したほうがいい」と興行主催者に判断されることもある。

「音楽のある街」の聖地「群馬音楽センター」は、クラシックのオーケストラにとっては音質面の課題、ポピュラーやロックのコンサートでは舞台構造等の問題が浮き彫りになり、高崎での興行公演の回数は減少してきたのが実情だ。もちろん市民音楽の発表の場などとしては、十二分に活用されているのだが、有料公演は群響の定期演奏会、高崎市・高崎財団の事業、秋の高崎音楽祭が音楽センターの中心で、ロックでは高崎出身のBUCK-TICKがふるさと凱旋のように音楽センターで公演している。

群馬音楽センターは、「音楽のある街・高崎」の象徴、聖地として、未来へ引き継ぐべき「歴史的資産」であり、維持費の市財政負担とバランスをとり、今のままの姿で使っていくこととなるだろう。

 

都内の名ホールに並ぶ高崎芸術劇場

群馬音楽センターに起因する施設的な課題を「音楽のある街・高崎」として解決するには、新しい音楽施設を建設するしかなく、それが高崎芸術劇場である。

音質やアメニティなど群馬音楽センターのホール課題に加え、おそらく高崎が「音楽のある街」として具現化するべきものが、高崎芸術劇場に凝縮されている。

例えば、メインホールとなる大劇場は、今のところ公開されているパース図や資料、工事写真などから、どういうものになっているのだろうかと想像するしかないが、素人の想像を大きく凌駕し、ホールそのものが来場者に感動を与えるような施設になるものと説明されてきている。

東京都内などには、音質に優れ重厚なしつらえで名ホールと評価されているコンサートホールがいくつかあるが、それらに匹敵する施設水準となっているようだ。

 

芸術劇場は高崎の都市ブランド

高崎芸術劇場では、高崎市や高崎財団が都市戦略としてコンサートの企画誘致に取り組んでいると見ることができる。国際的に知名度の高い海外オーケストラやアーティストは入場料が高くなるだろうが、関東圏や全国から高崎に音楽ファンが集まってくる。海外オーケストラが来日した場合、国内のいくつかの都市でコンサートを開くだろうが、一回のコンサートに入場できるのは2千人で、チケットが買えなかったり聴き逃したりしたファンは他の日程を探す。東京から新幹線でたった50分の高崎でお目当てのコンサートが行われるのであれば、当然行きたくなる。

都内の有名コンサートホールに匹敵するすばらしいしつらえの高崎芸術劇場で、すばらしい音楽を堪能できれば、高崎の都市ブランドの醸成に直結する。

 

音楽文化は東京集中に

コンサートの収支は、単純に言えば入場料と観客数を乗算した収入と出演料や開催経費の差し引きとなる。

オーケストラの演奏会は登壇する人数も多く、指揮者やソリストも招へいするなどコンサート費用が高額となることは想像でき、開催費用を例えば、約2千席で単純に案分すると入場料が高額になってしまう。地方都市では、自治体がコンサート費用を助成しないと、当地の実情に見合った入場料でクラシック音楽の演奏会を開催できない。開催すればするほど赤字になるともいわれ、入場料収入は初めから赤字で考えられているなど、地方都市ではオーケストラの演奏会を年間に何回も開催できない。売れっ子のポピュラー音楽も同様で、地方都市でのコンサート頻度は限られてくる。

東京は23区の狭い地域に、オーケストラやホール、様々な音楽ジャンルの演奏者など莫大な音楽資源が集積し、世界有数の音楽市場を形成している。音楽芸術においても地方との差は歴然としている。

 

「高崎から・高崎に」国内外の音楽芸術

音楽CDなどの売り上げが減少する一方、コンサートの入場者や売り上げは伸びており、音楽産業を活気付かせているそうだ。

ホールで聴く音楽は、実際に楽器が奏でる音色、音圧、アーティストの所作などコンサート空間に広がる全てが魅力である。演奏家が観客と一体になって、新しい音楽を生み出す場がコンサートホールで、ジャンルを問わず、ホールは「音楽の今」を創造し、発信し続ける場である。

高崎芸術劇場により、上質な音楽空間が誕生し、遠のいていたホールコンサートを高崎に呼び戻すことができそうだ。また、高崎アリーナが国際大会の誘致で大きな成果を上げており、同様の現象を高崎芸術劇場から巻き起こしてほしい。

高崎芸術劇場が高崎のビジネスの中心地・高崎駅東口前に位置する意義も大きく、ビジネス都市高崎と芸術文化都市高崎を深く結びつける役割も持っている。先に示したコンサートプロモーターズ協会の調査結果では、群馬県や北関東などのコンサート開催件数は非常に低水準であり、高崎芸術劇場が広域的な音楽文化の振興に寄与することも期待したい。

 

高崎が「音楽のある街」と言われる理由は

「音楽のある街・高崎」は、出自を調べると、30年前に始まった高崎音楽祭によってうたわれたキャッチコピーだ。

まず群馬交響楽団というプロのオーケストラが発祥し活動拠点が高崎にある。草創期が映画「ここに泉ありに」に描かれた。日本オーケストラ連盟に加盟するプロのオーケストラは全国に36団体あり、その多くは東京都内や政令指定都市に所在している。その他の都市でプロのオーケストラを持つ「音楽の街」は少ない。

ハード面では、音楽の街高崎のシンボル群馬音楽センターがある。群馬音楽センターは昭和36年に完成したアントニン・レーモンドの傑作で、建築費の一部として市民の浄財も集められ、前庭に「時の高崎市民之を建つ」が建碑された。

「音楽のある街・高崎」のリーディングイベントとなる「高崎音楽祭」、街を舞台に音楽が響く「高崎マーチングフェスティバル」が毎年実施されており、今年はともに30回を迎えた。

高崎芸術劇場は、こうした「音楽のある街・高崎」の大きな流れを受け、未来へつなげていくものとなるだろう。

今年9月に高崎芸術劇場がオープンするが、58年前に、初めて群馬音楽センターに足を踏み入れた高崎市民と同じ感激を、いやそれ以上の驚きを来場者は心に刻むことだろう。

 

 

「音楽のある街」を支える高崎精神

高崎の都市文化には、歴史的にも高崎商工会議所や当所会員など高崎産業界が大きな役割を果たしてきている。

高崎芸術劇場は、群馬音楽センターの精神を引き継ぐものとなっているが、音楽センター建設時に市民や市内産業界が寄せた真心も高崎芸術劇場に引き継がれているようだ。

市内企業から高崎市、高崎財団に対し浄財の寄付が行われており、高崎芸術劇場の事業に役立てられている。株式会社原田は、地域貢献と顧客への謝恩を目的に、毎月、店舗内ホールでコンサートを行っておりその売上を毎年高崎市に寄付している。7月には株式会社小島鐵工所(児玉正藏会長・高崎商工会議所会頭)から創立210年記念として高崎芸術劇場の振興に寄付があり、こうした寄付は貴重な事業財源として活用されている。

 

高崎商工会議所『商工たかさき』2019年8月号

 

 

 

 

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