ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.38

スペース カウボーイ

志尾 睦子

監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド/トミー・リー・ジョーンズ/
   ドナルド・サザーランド/ジェームズ・ガーナー


プロフェッショナルの流儀に心を寄せる

 ここのところ毎日難題に頭を悩ませている気がします。何が最良策なのか、どうやったら物事がうまくいくのか。日々変わる情報と、現実を照らし合わせながら考えを巡らすうちに、つい自分一人で悩みの底に落ちていく、なんてことはありませんか。そうした時ほど、人の力を借りないと、良き道は開けない気がします。先日そんなことを考えてふと思い出したのがこの作品です。

 主人公はアメリカ空軍を退役してしばらく経つフランクです。70歳に手が届こうかという彼は妻と二人でのんびりした隠居生活を送っていましたが、ある日NASAから力を借りたいという連絡が入ります。

 フランクはその昔、初の宇宙飛行士になるべく訓練されたチーム・ダイダロスの一員でした。しかしダイダロス計画は直前で中止され、宇宙飛行計画はアメリカ空軍からNASAへ引き継がれます。そのため、フランクたちチームメンバーは宇宙へ行く夢を断たれてしまいました。フランクはその後腕利きの技術者として務め上げ退役したわけですが、NASAからの連絡は、彼がかつて設計に関わった制御回路を積んだ衛星がトラブルを起こした、というものでした。しかもそれはロシアのもので、NASAとロシアが共同で修理に当たることになったものの、システム自体が古いため今の技術者では歯が立たず、設計に携わったフランクしか修理ができないのではないか、というものでした。寝耳に水の事態とはいえ、フランクにとっては宇宙という夢の舞台がまた身近に迫ってきたというもの。彼はかつての仲間を呼び寄せてその修理のため宇宙へ行こうと画策します。

 制御回路装置の修理には、驚くべき裏が隠されているのですが、そうとは知らぬ彼らは、宇宙へ行けるかもしれないと老体に鞭を打ち訓練を開始します。そんな姿は一見滑稽にも映るのですが、かつての夢を取り戻すチャンスが目の前にあるということに、ただ心を傾けていく彼らの姿はやがて何よりも強いエネルギーを放出し、夢と現実を引き寄せてしまうのです。フランクたちの前には、もとい地球の前には難題がいくつも立ちはだかりますが、その度に彼らは知識と経験をフル稼働し、チームワークという最強の武器でそれを乗り越えていくのです。

 真のプロフェッショナルとは、一朝一夕では成し得ないからこそどれだけ時間が経っても何が起きようとも揺るぎないものだと痛感させられます。そしてそれは決して一人では活用できないものだとも教えられるのです。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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