66.高崎新風土記「私の心の風景」

萩の風情をもとめて

吉永哲郎

 半世紀前のことになりますが、七月の末に京都大原の寂光院を訪れた時でした。品格のある老尼の丁寧な案内をいただき、本堂から遠く比叡の山を眺めつつ庭を見やっている時、思わず「あ、萩が咲いている」と声をあげてしまいました。すると老尼は「まだ夏だというのに、なんでまた、はよう咲きはったんや。秋はまだどす」と、萩の花に語りかけました。
 萩の花が咲きはじめますと、いつもこの老尼の姿を思い出します。万葉集で一番多く詠まれた秋の七草は萩の花で、約百四十首ほどあり、特に「秋風は日にけに咲きぬ高円(たかまど)も野辺の秋萩散らまく惜しも」(高円山の野辺に咲く萩が、日増しに吹く秋風に散っていくのが惜しいなあ)とありますように、当時奈良の高円山が萩の名所だったようです。今も山麓の新薬師寺や白毫寺には萩が沢山植えられています。
 こうした風情を感じさせるお寺が高崎にもあります。聖石橋東の龍廣寺です。山門前の白萩、境内の萩の植え込みがたくさんあり、季節になりますと気になります。高崎には萩の名所が多く点在していますので、お好みのひそかなる萩の花の名所をお訪ねください。また、萩は「脛(はぎ)」に通じます。芭蕉の初期の句に「寝たる萩や容顔無礼花の顔」(萩が乱れて地に伏しているのは、美人が寝転んで脛を出しているような妖艶な姿だなあ)とありますように、古くから萩の花は美人の風情とかさねて眺められていました。
 さて、萩の花をもとめる心こそ、秋の男のたしなみのひとつ。あなたはどちらの萩を。

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