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アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー

志尾 睦子

2014年 アメリカ 80分
原題:『Iris』
監督:アルバート・メイズルス
出演:アイリス・アプフェル

ファッションを楽しむことが生きること

 高崎の街中はページェントとアートでとても賑やかに秋の深まりを後押ししています。少しずつやっていた私の衣替えも、すっかり冬仕様です。ふと、暖色というよりは暗い色味が多いクローゼットに自分で驚いてしまいました。この数年の閉塞感が洋服たちに現れていたようです。仕事の仕方も少し窮屈に根を詰めていたんじゃないかという振り返りがありました。今年は意識を明るい方へ持って行こうと思うと、仕事の効率がなんだか上がるような気さえしてきました。気持ちの切り替えを洋服や身につけるものでするというのも一つのスキルなのだと思います。

 さて今日はそんなことを考えていて思い出した一作をご紹介します。

 撮影当時のアイリス・アプフェルは94歳ですが、素晴らしいファッションセンスに身を包み、とても楽しく快活に生活している様子がカメラに映し出されます。ひらめきが大事、毎日新しい組み合わせを考えてファッションを楽しむという彼女。ちなみに、本作は2015年制作なので今年でなんと101歳。昨年は彼女の100歳記念でファッションブランドがコラボレーション企画を発表し、今年発売もされるなど、今なお注目される〝イケてる〟ニューヨーカーです。

 インテリアデザイナーとしてキャリアを始めたアイリスは、その後夫・カールと始めたテキスタイル会社で大成功を収め、ファッションデザイナーとしても活躍していきます。服飾品コレクターの一面も持ち、2005年にはメトロポリタン美術館で企画展を開催、記録的な動員数を打ち出します。超一流ブランドのものと、路地裏で売っているチープなアクセサリーを自在に組み合わせます。彼女の手にかかるとあっと驚く新しいファッションとなり、輝きを放つのだから不思議です。目の前のアイテムをひらめきと楽しさで我が物にしていく様子に、まさしく見惚れてしまいます。選ぶというより発掘すると話す彼女の色使い、小物使いは、瞬時にものの価値を見定める力があってこそ。感覚だけに頼るのではなく、長きにわたる数々の経験と冷静な判断がそれを裏付けていることがわかります。

 だから、自分の中に湧き上がるものに正直で、自分を喜ばせるために楽しんでいる彼女の生き方が出来上がる。これが、80年以上カルチャーシーンのど真ん中で人々を魅了し続ける理由なのでしょう。自分を楽しく豊かに生きさせられるのは、自分だけ。それが仕事の成功にも繋がっていく。彼女の生き方にはたくさんの示唆が含まれていました。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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